白山比咩神社の「豊年講寄稿「地域の恵みを伝承する神事に感謝」」を掲載しています。

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豊年講寄稿

(令和7年3月)

「地域の恵みを伝承する神事に感謝」

白山比咩神社 奉耕田 田長  多田  浩

多田  浩 白山比咩神社の奉耕田を耕作し始めて、早くも2年の歳月が流れました。
この土地を引き継ぐこととなったのは、前任の田長が病を患い、耕作が困難となったことがきっかけです。急遽、先代田長からのお願いを受け、大切な役割を引き受けることになりました。神社の伝統を支えるこの奉耕田の管理には大きな責任を感じましたが、それ以上に、神聖な土地を守り育むことへの使命感と感謝が心に芽生えました。
そもそも白山比咩神社とのご縁は、私の幼少期にまで遡ります。小学生の頃、夏休みの朝六時、神社境内で行われるラジオ体操に通うことが日課でした。静寂な朝の空気の中、神社の澄んだ雰囲気に包まれながら体操をする時間は、私にとって何よりも心地よいものでした。それから年月を経ても、神社は私にとって心の拠り所であり、今回の奉耕田の耕作を引き受ける決意の背中を押してくれた大切な存在です。
耕作を始めた当初は、経験の浅さゆえに手探りの連続でした。種蒔きや水の管理、雑草の除去に至るまで、先代田長や地域の方々から多くの知恵を授かりながら進めていきました。特に、令和5年の初春、初めて鍬を入れたときの緊張感は忘れられません。豊かな土壌が持つ生命力と、自然がもたらす恵みへの感謝の念が湧き上がりました。

田男の稲穂の調製を見守る田長

2年間の耕作を通じて、自然の厳しさと美しさを深く学びました。梅雨時の長雨や台風による被害は思わぬ困難をもたらしましたが、そのたびに地域の方々と助け合い、知恵を出し合いながら乗り越えることができました。収穫した米を神社に奉納する際には、神様への感謝とともに、自分自身の成長を感じる瞬間でもありました。
迎える令和7年、奉耕田の耕作もいよいよ3年目に入ります。これまでの経験を活かし、より効率的で持続可能な農法を模索しながら、地域との協力体制をさらに深めていく所存です。また、田植えや稲刈りの体験を通じて、次世代への文化継承にも取り組みたいと考えています。
奉耕田は、単なる農地ではなく、神社の伝統と信仰が息づく神聖な場所です。この地での活動を通じて、自然と共生する喜びや、伝統を守り伝える意義を改めて感じ、多くの方々にその魅力を伝えていきたいと思います。