白山の最高峰である御前峰の頂上には、たくさんの石を積み重ねた塚がありますが、これはある言い伝えによるものだとされています。
昔、加賀の国の男が駿河の国の男と旅先で道連れになり、互いのお国自慢を始めました。
そのうち、話は白山と富士山のことになり、どちらが日本一の山か言い争いになりましたが、白山も富士山もふたりがいる場所からは見えないので決着がつきません。
そこで男たちは、国に帰ったら、白山と富士山の頂上から長い樋(とい)をかけ、真ん中に水を入れて、流れていくほうが低いということで決着をつけようと約束しました。
故郷に戻ったふたりは互いの国の人たちに協力を頼み、白山と富士山の頂上から樋をつないでいきました。
そしていよいよ勝負の日、真ん中に入れた水はすべて白山へと流れてきました。
あわてたのは加賀の人たちです。「なんとしても富士山に負けたくない」そう思った加賀の人がとっさにわらじを樋をのせた塚の上に積み重ねると、水はどちらにも流れなくなり、白山と富士山は「同じ高さ」ということになりました。
それ以来、白山の登山者は頂上に辿り着くと、わらじを脱いでこの塚の上に乗せるというならわしが生まれたということです。
※同じ話は白山と立山(標高三〇一五m)の間にも伝わっています。立山側に流れた樋の水を、樋の下に石を入れて止めたというもので、以来立山登山に石を持って登り、山頂に置いてくるようになったと言われています。実は白山からは富士山は見えず、立山の雄山からは好天時に遠望できるそうです。