白山比咩神社の「シリーズ企画 自然と生きる②「神仏と水の恵みに感謝し地域に尽くす」」を掲載しています。

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シリーズ企画 自然と生きる②「神仏と水の恵みに感謝し地域に尽くす」

(平成31年1月)

当社とご縁のある中から、自然を敬い、慈しみながら、日々の生業を営む方々の姿をご紹介します。

竹内 信孝さん(白山市蓮池町)

昭和17年生まれ。旧美川町で町議会議員、町議会議長を歴任したあと、平成3年に町長に初当選。合併して白山市となるまでの14年間、町のリーダーとして地域の発展に尽力しました。昭和49年には伝統工芸である美川刺繍の商品を取り扱う美川刺繍工芸株式会社を設立し、現在は取締役会長を務めています。


信心に生きた母を手本に

白山市美川地区の蓮池町にある竹内信孝さんの自宅には、立派な鳥居を備えた「神社」があります。住居とつながった木造の社殿で毎朝欠かさず祝詞を奏上することが、竹内さんの大切な日課です。
竹内家には、この邸内社のほか、阿弥陀如来などの仏像を安置する仏教道場もあり、神仏に囲まれた暮らしを送られています。竹内さんは白山比咩神社にも熱心に参拝され、「おついたちまいり」を45年もの長い間続け、崇敬者総代も務めています。自らが信仰を重んじてきた理由について、竹内さんは「両親、特に母親の背中を見てきたからでしょう」と振り返ります。
江戸時代の初代から数えて、370年を超える歴史を持つ竹内家は、かつては美川地区で北前船の廻船問屋を営んできた旧家です。竹内さんの母・ユキさんは病弱だった夫を支えながら、町内会長や婦人会長を務めました。元々信心深い女性でしたが、40代後半を迎えるころから夢の中で神仏のお告げを聞くようになったといいます。それ以降は自宅に邸内社や仏教道場を建立し、訪れる人たちからの相談にこたえながら、神道や仏教の信仰を通じたボランティア活動に生涯を捧げました。
神仏に深く帰依し、世の中に尽くしたユキさんの姿は、竹内さんの生き方にも多大な影響を与えました。石川県氏子青年会連合会の初代会長を務めるなど、若いころから神社を支える活動に力を注ぐ一方、旧美川町の町議会議員、議長を経て、町長として地域の個性を活かしたまちづくりに取り組みました。
町長を退いたあとも、伝統の美川刺繍の普及に携わり、ふるさとの振興に貢献されています。竹内さんの胸の内には、「美川で長い歴史を重ねてきた家の一員として、地元を全国に誇れるまちにしたい」との強い願いが生き続けています。

(左)白山の水の恵みに感謝する豊年講秋季大祭。竹内さんも白山伏流水の恩恵を受ける地域の代表として世話人を務めました。
(中)邸内社の社殿で祝詞を奏上する竹内さん。読み上げる祝詞は白山比咩神社の歴代宮司が直筆したものです。
(右)昭和39年に設立した邸内社は「白山社日吉大社」と名付けました。竹内さんを宮司として、春と秋には例大祭を執り行っています。


美川のまちを潤す伏流水


弘法大師ゆかりの湧水を発掘

ふるさとを愛する竹内さんは、白山からの伏流水が美川地区に自然の恵みをもたらしていることを喜んでいます。白山山頂から流れ出た雪解け水は、手取川流域の地下を百年かけて流れ下り、美川の各所で清冽な水となって湧き出しています。
竹内家のすぐそばにも、1300年以上前に弘法大師の手によって湧き出たと伝わる白山伏流水の湧水、「蓮池の水」があります。戦後に新設された道路の下敷きになり、忘れられていた湧水を、昭和三十年代に復活させたのが竹内さんの母・ユキさんでした。埋もれた湧水の存在を夢のお告げで知り、自宅を蓮池町の湧水そばの土地に移して、行政に道路の位置を変更するように訴えます。熱心な陳情が実って、移された道路の跡地を掘り起こすと、お告げ通りに清水が湧き出たのでした。

竹内家が管理する「蓮池の水」。弘法大師の像や玉砂利の池、手水鉢などを設置して、訪れた人が自由に利用できます。


白山の恵みに感謝を忘れず

それ以来、「蓮池の水」は竹内家の管理のもとで整備され、県内外から人々が訪れる名水スポットとして親しまれています。同じ湧水を自宅で利用している竹内さんが白山の恩恵を実感しながら思い出すのは、両親との幼い日の記憶です。毎日、朝と夕方に白山に向かって手を合わせていた両親は、「日々健やかに暮らせるのは、すべて白山さんの神様のおかげだよ」と子どもたちに言い聞かせていました。
両親のそんな教えを受けて育った竹内さんには、「神仏や自然に感謝することの大切さを次の世代にも伝えていきたい」との使命感があります。竹内さんが守り続ける水の恵みは、私たちに自然の偉大さを伝える白山からの贈り物でもあるのです。

記・中道大介(高桑美術印刷)


美川刺繍

明治期以降の旧美川町で、家計を助ける手工業として発展しました。金や銀など色とりどりの絹糸を駆使して、布地に文字や絵、図柄を立体的に縫い付ける技法は、平成3年に国の伝統的工芸品に指定されています。美川刺繍工芸株式会社では刺繍額をはじめとして、美川刺繍による多彩な工芸品を企画・製造・販売しています。

竹内さんが白山比咩神社に奉納した美川刺繍の刺繍額。