白山比咩神社のコラム「神道講話423号」を掲載しています。

神道講話

神道講話423号「右か左か」

次郎左衛門雛(写真提供 成巽閣)


◆ はじめに

3月3日は雛まつり「桃の節句」を迎えます。
この頃になると、内裏雛の男雛は右か左か、女雛は左か右か尋ねられることが多くなります。
お人形屋さんにお伺いしたところ、関東では向かって左が男雛で向かって右が女雛ということでありました。ちなみに京都を始めて関西地方では、向かって右が男雛、向かって左が女雛であります。
内裏雛の男雛は天皇様であるので、あくまで中心であり、皇后様は天皇様の左側にお立ちになられるので、向かって左側に男雛、右側に女雛が相応しいと思われるが、どちらが正しいとは言えません。むしろどちらでも良いとのお答えでありました。

「横町うらら館(鶴来新町)」に期間展示の雛飾り(関東風)

◆ 中心(正中)からの右左

関東と関西の違い

中心(神社では正中)を決める時、天皇様が中心と考えると向かって左が天皇様で、向かって右側が皇后様になり、内裏全体を中心と考えると男女は反対となります。
大きく見て全体のバランスを考えると、どちらがどうという事は考えなくとも良いように思われます。神社では、中心の正中が一位、左側(向かって右)が上位、右側(向かって左)が下位となります。
左とは、辞書では東に向かって北の方角といい、右とは東に向かって南の方角を言うとあります。
ちなみに川は下流に向かって右側を右岸、左側を左岸といい、奈良の平城京・京都の平安京は西半分を右京といいます。
また、日本の官職では、左大臣が右大臣の上になり、左が偉いが、中国では右を尊び、降格人事を左遷と言います。
フランス革命後、議会で議長席から見て左側の席を急進派が占めたから左派と呼ばれました。左派は革命的前衛で、右派は伝統を尊ぶ保守であります。
日本でも保守的な思想や行動を右翼と言い、急進派、過激派を左翼と言っています。

「左」にまつわる言葉
左党酒の好きな人又はその仲間。
左利き ①右手よりも左手が上手に使いこなせる人。
②酒飲みのこと。固いものを彫るとき、右手に「槌」を、左手に「のみ」を持つことから、その「のみ」を「飲み」と掛けた言葉。
左うちわ左手でうちわを使うこと。しいては安楽な暮らし、境遇の様子。
左前 ①着物の右のおくみを左のおくみの上に重ねて着ること。
②経済状態が悪くなること。
「右」にまつわる言葉
右に出るすぐれた方(右に出る者はない)
右のとおり手紙などで前に述べたこと。
右腕頼りになる人。
右へならえ隊列を一直線に並べるとき。一番右の人に合わせるシステム(右が偉い)

◆ 力の均衡

右脳は、感覚的に直感派で結論を導き出した後に、理屈やデータを集めます。
これに対して、左脳は科学・物理・医学などのように、まずいくつかの前提の事実があって、それを積み重ねることによって導き出す結論であり、信用性に優れています。
したがって、直感で判断した結論を正当化するには、その結論に辿り着く前提と積み重ねの思考力が必要となります。
つまりどちらかが勝っていてもどちらが劣っていても世間を納得させる結論にはならないのであります。身近にある手漕ぎのボートは、オールが一本だけだとぐるぐる廻って前には進めません。オリンピックの競技でもボートの右側と左側のバランスがくずれれば真っ直ぐには進めません。
また、飛行機も同様で、右翼と左翼が均衡でなければ、真っ直ぐには飛べないのであります。

◆ むすび

以前にも申し上げましたが、「神輿」は、正に右翼・左翼に前と後の力のバランスによって担がれ、神賑わいとなるのであります。
これは力と力を合わせて〔(50+50)=100〕且つ力と力を掛け合わせると〔(50×50)=2500〕と最大の力となるのであります。
もし(60×40=2400)(70×30=2100)(80×20=1600)だとバランスが崩れて力が出しきれません。やはり50×50が最大の力となるので、中心がぶれないように左右が傾かないようにしっかりと支え、お祭りとなるのであります。私たちは日々の生活の中でも、中庸の心で互いに助け合い、認め合ってより良い社会を築きたいものです。

滋賀県日吉大社例祭(山王祭)神輿神幸(写真提供 日吉大社)